人材の確保を急いでいる
1人の求職者に対してどのくらいの求人数があるかを示す指標である有効求人倍率について、2020年10月の時点では雇用市場全体で1.04倍でした。低水準の状態が続いていましたが約1年半ぶりに上昇に転じています。新型コロナウイルス感染症の影響による雇用市場の悪化は一旦下げ止まったようです。一方、完全失業率は微増で3.1%となっています。特に飲食業や宿泊業などは、クリスマスや年末年始の商戦に大きな影響が出ています。
業種ごとの求人数を前月や昨年の同月と比較した場合、前月より求人数は増えているものの、昨年に比べると約2割も減少しています。事務・営業販売・介護以外のサービス業・清掃・運搬・包装などの分野では30%以上も落ち込んでいます。これも新型コロナウイルス感染症の影響で、新規雇用を控える動きが大きいためだと考えられます。厚生労働省の発表によれば、小売業でも1万人以上の雇止めが発生しています。このように、雇用市場全体で見れば非常に厳しい状況が続いていることが分かります。
一方、介護業界は他とは少し異なる状況にあるようです。最新の数値では介護業界の有効求人倍率は3.85倍と、非常に高い水準となっています。他の分野と同様に減少傾向にはあるものの、現在でも高い倍率を保っています。減少傾向になった理由としては、雇用市場全体が悪化したため「他業界から介護業界に人材が流れてきた」「業界内の転職意欲が下がり離職率も下がった」「新規求人が減少した」ことなどが挙げられます。現在の介護業界は、以前よりは人材確保の困難度は下がったものの依然として厳しい状況が続いているといえます。逆にいえば、求職者にとっては就職しやすい状況です。人材確保に向けた取り組みが進められているので待遇もよくなるでしょう。介護士として転職を考えている人にとっては今がチャンスです。
新型コロナウイルス感染症における影響が長期化している中で、採用活動が好転した事業者は少ないでしょう。そのため、コロナ時代に合わせて柔軟に採用活動を行っている事業者こそが、これからの時代は生き残ります。自社の魅力を届けるための取り組みや未経験者でも働ける環境の整備、既存の職員にとって働きやすい環境作りに積極的に取り組んでいる事業者を見つけることができれば、介護業界で長く活躍していけるでしょう。介護業界はこれからも確実に需要が伸び続けていく分野です。